譲渡いただけることの、ありがたさ

西表島へ越してきて、そろそろ2か月になる。

振り返れば、この2か月間は、この島の生活スタイルに慣れようと、ずっと必死だった。


食料品や日用品の買い出しのため、フェリーに乗って石垣へ出向いたり。

初めて見る地元の野菜や花を、食べてみたり。

道路に出没するセマルハコガメを、追いかけて観察したり。

排水溝やため池の水たまりで、ヤエヤマイシガメを探したり…。


西表島でのカメ類の観察は、新しい発見の連続だ。

生息場所や、採食物の情報など、少しずつ記録している。

しかし、ほぼ毎日観察していても、全然わからないことだらけで、その都度頭を捻っている。

まだまだ、カメ類の観察量が圧倒的に足りていない。



昨夜は、知人の知人による、「自宅の庭にヤエヤマイシガメが住み着いている」という情報を聞きつけて、彼女のお宅を訪問させていただいた。

どうやら、彼女の家のお庭には手づくりの「池」があり、そこにイシガメがいるのだそう。

お宅を訪問すると、彼女は、すぐさまこの冊子を私にくれた。

「昔、千石先生が西表にいらしていた時、とても仲が良かったの。

これは、その時に頂いたカメの本。捨てるにはもったいなくて、取っておいたんだけど。

カメの研究をしているあなたに、あげる。」

と。

なんと、初対面の私に、千石正一さんからいただいた本を譲ってくださったのだ。

イシガメの観察許可だけでなく、こんな大切なものまでくださるなんて…!


自然誌系の冊子は、この冊子のように、年月が経つと絶版となることが多々ある。

そのため、これを私が個人的にインターネットなどで入手するのは、中々難しい。

この冊子は、入手困難な、貴重な文献なのだ。


昨日はその後、目的のイシガメを観察。

さらに、一緒に訪問してくださった方が、集落内のありとあらゆる水たまり場を、案内してくれた。



私のカメ研究は、本当に、様々な方々のおかげで成り立っている。

冊子をくれた彼女や、彼女を紹介してくれた方。

島内の知り合いが少ない私に、カメに関する口コミ情報を教えてくださる方々。

一緒にフィールドへ出向いてくれる方も、本当に感謝極まりない。


いつかみんなに、何かお返しすることはできるのだろうか。

それが、論文を発表する、ってことなんだろうか。。。



今はまだ、まず、生活を整えること。

そして徐々に、もっと頻繁にカメを観察しに行けたらな。

1コメント

  • 1000 / 1000

  • ruchiaana

    2023.07.07 16:12

    初めまして。 時を越えた素敵なプレゼントですね。 貴重な経験をシェアしてくださりありがとうございます。 私は一亀飼育者です(二匹の亀に20年向き合ってみると少しずつ心が通じてきた部分がうっすらと見えています。) 貴重な本は千石先生という方が熱心な亀の研究のフィールドワークに来た若い研究者が居たら是非渡して譲ってあげて欲しいと、 その地元の方に頼んだのでしょうね。 そしてけして利便性があるわけではない西表に、やってきた研究者をみて今がその時だと気づいて渡す。沖縄の方の心意気にも胸打たれます。

亀に踏まれて -KAME HACK-

主に「野生の亀」について探求しています。 現在、西表島で研究中。