漁網による事故死


一昨日、調査地にて。


おそらく、地元の方が仕掛けたのだろう。

川の中で調査をしていると、水中に沈む魚網を発見した。


このような魚網は、調査地の河川でたまに見かけるのだが、今回見つけた網は、水底深くに沈めた状態であった。

網の中をよく見てみると、カメらしい影が見え、どきりとした。

まさか…。



すぐに網を陸地へ引き上げる。

案の定、ニホンイシガメが多数混獲されており、その数なんと、9個体。

カメ類は肺呼吸をする生物であるため、このような網に引っかかったままだと、溺死してしまう。

全てのイシガメを、急いで網から取り除く。


9個体のうち、すでに溺死してしまっていたものが、4個体確認された。

残りの5個体うち、2個体は網に入った直後だったのだろう。

しばらくすると自力で動き始め、逃げようとする仕草がみられたため、そのまま放流を行った。

残る3個体は、四肢をだらしなく伸ばした状態で、すでに死んでいるかと思われたが…。


しばらくすると頭を動かしはじめ、鼻や口から泡や水を吹き始めた。

陸地にあげてから20分ほど経過すると、自らの力で頭を持ち上げられるようになった個体も見られた。


これら3個体については、外敵から身を隠した状態で酸素を取り入れられるように、陸地の木陰へ置いておくことにした。


あとは彼らの生命力を信じるしかない…。

魚網の混獲による、カメ類の死亡事故。

このような事例は、海域、つまりウミガメ類において、知識が広まってきている。


一方で、河川等の淡水域で起こる死亡事故については、まだ認知が進んでおらず、このような事故が、しばしば起きているのが現状だ。

特に、河川で罠を仕掛ける方は、プロの漁業関係者ではない、一般の方であることが多い。

つまり、海域よりも淡水域の事故例などは、知識の共有が難しいのだ。


網の設置方法も、悪気があるわけではないのだろうが…。

魚を獲ろうと思って罠を仕掛けたら、カメが溺死する、、、なんて、網を仕掛けた方も、想像し難いのだろう。


しかし、このような事故が起きていることは、事実である。






魚網に餌は入っておらず、水底に沈ませるための重たい石だけが入れてあった。

カメ類は、餌に誘因されたのではないようだ。


9個体、という数多くのイシガメが混獲されたのには、「カメ類の季節移動」と因果関係がああるように思える。

実はこの魚網が設置されていた付近には、カメたちの絶好の冬眠場所がある。

不運なことに、網が設置されていた「魚道」は、ちょうど冬眠場所へと移動してきたカメたちの「カメ道」にもなっていたようだ。




今回発見した、魚網による混獲事故。


地元の川を慈しみ、利用するすべての方へ。

どうか、再発防止へとつながるよう、知識や理解が広がり、そして届くように。


事故から学べる事が、少しでも多くの方と共有できれば…と、願ってやまない。

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亀に踏まれて -KAME HACK-

主に「野生の亀」について探求しています。 現在、西表島で研究中。