三井寺の放生会

滋賀県にある、三井寺(園城寺)をご存じだろうか?

京都府に近い、琵琶湖の南西にあるお寺だ。


ここでは、千団子祭りというお祭りの際に、「放生会」が行われる。

しかも、ここで行われる放生会には、「カメ」が使われるのだ。

(※放生会とは、願いを込めて池に生き物を放つという、仏教の風習。)


昨年10月に、このお寺を訪ねた時のこと。

池には、さぞ、たくさんのカメがいるのだろうと思い、出向いたのだが…。

けれど。

池に、カメの姿は見当たらない。

???


何故だろうと思い、寺中の方々に尋ねまわった。

すると、皆さんの証言が微妙にちがう…。


6名の方に聴き取りをして、彼らの話をまとめていくと、

やっと、一貫したストーリー像が、みえてきた。

ここでは、確かに、毎年、カメの放生会が行われている。

そこで使われるカメは、資料写真から推測して、ニホンイシガメやクサガメだ。

どうやら、使用するカメの種に、こだわりはないようだ。

一昔前は、お寺の近くにたくさんのカメが生息していた。

そのため、千団子祭りの前になると、近くでカメをたくさん獲ってきて、お寺の池に放流していたようだ。


池に、柵はない。

カメたちは、水域と陸域を行き来しながら移動する生き物だ。

お祭りが終わり、池に放流されたカメたちは、その後季節移動をして池からいなくなる。

そして再び、千団子祭りの前になると、お寺の方々によって池に集められる…。


このようなことを繰り返していたらしいのだ。

けれど、野生のカメが近代化とともに減少してしまい、現在はカメの集め方が変わってきている。

現在は、業者から仕入れたり、お寺の敷地で飼育・繁殖させてカメたちの個体維持をはかっているらしい。


そしてお祭りの季節になると、池にカメが補充される…と。



なるほど。

どおりで、10月の池では、カメが見られないわけだ。

カメたちは、他の場所へ移動してしまっているらしい。

お寺の方々の中には、お寺の敷地内で産卵するカメを、何度も見かけていらっしゃる方もいた。


放生会で放流されたカメたちは、お寺や、その周りへと出かけていくようだ。


三井寺の近くに、大きな池や川はなかったかな…。

このように放浪しているカメたちは、最終的に、暮らしやすい生息地へと移動しているはずだ。




もし今度また尋ねることができたら、その時は、お寺の周りの水域環境を探してみよう。

三井寺のマスコットキャラクター。

背中には、しっかりと甲羅を背負っていた。

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亀に踏まれて -KAME HACK-

主に「野生の亀」について探求しています。 現在、西表島で研究中。