私は学部生の時、大学寮に住んでいた。
半個室の自治寮生活は、とても楽しくて充実していたことを覚えている。
特に、他学部の先輩や同期と知り合うきっかけをもらえたことは大きい。
そんな寮で出会った先輩の中に、絵描きとして素晴らしい才能をもった先輩がいた。
学生の頃、先輩は自身で描いた絵をベースにして、手作りの手帳やメモ帳を制作していた。
けれど、卒業と同時に寮を出てしまえば、毎日挨拶を交わしていた寮生たちとも疎遠になる。
その先輩とも、学部卒業後はしばらく連絡を取っていなかったのだが…。
ことの始まりは、お弁当箱だった。
「カメの絵がデザインされたお弁当箱が欲しい」
と、私の無理なお願いを聞いてもらったことがきっかけだ。
その頃、私はカメの絵が描かれたお弁当箱を、必死に探していた。
転職をして、お弁当箱が必要となったためだ。
カメ柄のお弁当箱は、いくつかの種類が販売されているのだが、デザインや容量を細かく見ると、既存の商品では痒い所に手が届かない…。
結局、数か月かけて探しても、望むようなお弁当箱は見つからず。
もういいか、と、妥協して既存のカメ柄お弁当箱を買おうと思ったりもした。
でもやっぱり、納得のいくお弁当箱を手に入れたい…。
毎日使うものだからこそ、毎日目に触れるからこそ、「超お気に入り」である必要があった。
そんな折、なんだか突然、先輩のことを思い出した。
あの先輩が描くタッチの、優しい雰囲気のカメがいいんだよなぁ…。
………あれ。
「もしかして、先輩、カメのお弁当箱を作ってくれないかな…？」
久しぶりに連絡を取り、お願いをしてみる。
彼女はすでに就職をしており、社会人として忙しい毎日を送っているはずだ。
それでも、先輩が「絵を描くこと」がどれだけ好きだったかを、寮生活の時、間近で見ていた身としては。
もしかしたら、このオーダーを受けてくれるのではないか、と、思い立ち…。
そして、
「お弁当箱を作ったことはないけど、やってみる！」
と、快く承諾してくださったことから、完全オーダーメイドのカメ柄お弁当箱制作がはじまった。
オーダーメイドのお弁当箱を発注してくれる「業者さん探し」から、カメのデザイン作成、
注文から発注まで、すべて行っていただいた。
数か月後、完成品が届いた。
素敵なデザインに感動することはもちろん、お忙しい中、無理なお願いを聞いてくださったことに、感謝の気持ちでいっぱいだった。
あれから、二年。
昨年、先輩はフリーの絵描き・てづくり作家さん「maemerry」として活動をはじめられた。
いつか独立して活動したいとお聞きしていたので、この報告を聞いた時は本当に嬉しかった。
これからは、正式な「プロ作家さん」へお仕事を依頼することになる。
早速、年明けにお仕事を依頼する機会が巡ってきた。
オリジナルの「名刺カード」、「HPのロゴ」、「アイコン」の制作依頼。
話し合いを重ねながら、「私のイメージ」と「カメ」を先輩の「デザイン」によって繋げ、形にしてもらった。
そして納品された名刺カードと、新しく私の「顔」となるアイコン。
名刺カードは、来月参加する淡水ガメ情報交換会で、報文と共に配る予定だ。
アイコンは、これから出会う人たちにとって、私のイメージとなる。
先輩は、私が提示する細かいこだわりを上手に加味してくれる。
今回のお仕事も、全信頼をおいて依頼することができた。
素敵なデザインを、いつも、本当にありがとうございます！
これからも、応援させていただきます。
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