亀に噛まれて

野生のカメを、持ち上げる。


そうするとカメたちはみんな、個性豊かであることがよく分かる。




バタバタと四肢を素早く動かして逃げたがる子、

顔を引っ込めて防御態勢になる子、

噛みつこうとする、臆病な子。


みんな、本当に十人十色で、性格がそれぞれ違うのだ。


つい最近出会ったアカミミガメの中に、特別臆病な子がいた。

実は、臆病者ほど攻撃的だったりするのだが

案の定、このアカミミガメもそうだった。


手に持てば、噛みつこうとする。

けれど手を放せば、どのアカミミガメよりも必死に逃げまどう。

水に入れれば、誰よりも水底深い隠れ場所を目指す。

いわゆるスッポンのように臆病な、

そんな性格をしたアカミミガメだった。




…ってことを一瞬忘れてしまい、

調査の作業中、他のアカミミガメと同じように持ち上げた瞬間。




がぶっと、私の手のひらに噛みついた。




噛みついているアカミミガメ自身も怖いようで、目をつむりながら噛みつき続けている。

引っ張ってもなかなか離してくれないので、力を抜いて、噛まれている手のひらを少し押し返す。

すると一瞬噛みつく力が弱まった。

その隙を狙って、手のひらから引き離す。






噛まれた時はすごく痛いし、離してもらうのに必死になる。

でも、ことが終わると、不思議と高揚感が湧いてきた。



…正直、すごくうれしい。

私の皮膚を口につけている姿に、愛おしさを感じる。


実は、野生のカメに噛んでもらう経験は今回が初めて。

噛まれようと思ってカメに噛んでもらうのも気が引けるし、、


どうやら私は、いつかカメが自然に噛んでくれる日を待っていたようだ。


つい、傷口を記念撮影してしまった。



亀に噛まれて、噛まれたかった気持ちを知る。

きっと「カメ」に関わる経験は、

自分にとっては、すべて財産なのだと思う。




そんな私が命を全うした、最後の瞬間は。

人生の終止符は、亀に踏まれて、が良いな。


実はそれが、このBLOGのタイトルの意味、だったりも。





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亀に踏まれて -KAME HACK-

主に「野生の亀」について探求しています。 現在、西表島で研究中。