カミツキガメ事情 -元ペットの扱いとこれから-

 先日後輩が捕獲したカミツキガメを安楽死させるとのことで、見学をさせてもらいに行ってきた。

 これまでカミツキガメを見たことはあったが、実際に触れたことはなかったため あわよくば持たせてもらってツーショットが撮れたら…という下心ももって。



 甲長40cm弱の成熟したオス個体。

 体重約5.5kg。 硬くて重い甲羅と力強い肢、大きな爪。そして美しく長い尾と特徴的な頭部の形。


 …かっこよすぎる。


 早速ツーショットの許可をいただき、噛まれる危険の少ない持ち方を教えてもらう。



 そしていざ触れた時のあの高揚感は、、、、、

 なんと表現したらいいのか。 

  

 個体サイズの大きさももちろんあるが、普段触れているアカミミガメやスッポンに比べて力は強く、持ち上げようとした際にカミツキガメの爪で指を切ってしまった。


 比較的おとなしい性格の子だと聞いていたが、いざ持ち上げると「カプカプ」と噛みつこうとする仕草をする。 

 噛まれないように注意しながら持っていたけれど、もし噛まれても本望だと思ってしまう。


 腕で持った時の重量感に、カミツキガメの存在を感じる。

 その存在感に、ただただ心を奪われた。


 カミツキガメと触れ合えたこの時間は、私の宝物だ。




 …ところでなぜ安楽死をさせることになったのか。

 そもそも、なぜカミツキガメがまちの川で捕れたのか?


 カミツキガメは外来生物法の特定外来生物に指定されているが、その指定以前にペットとして人気が出た際、全国的に流通が広がった。

 ※外来生物法・特定外来生物について下記URLに具体的説明があります。


 しかし最期まで面倒を見切れなくって捨てられた個体や、野外へ逃げ出した個体が野生化していったという経緯がある。


 本州の一部の地域ではすでに繁殖・定着が確認されている場所もあるが、今回捕獲された水域では、おそらく繁殖はしていないようだ。

 つまり今回捕らえたオス個体は、元ペットのカミツキガメであった可能性が高い。



 カミツキガメが発見された場合、一般的にはまず警察署へ届け出る。 

「落とし物」、すなわち捜索されているペットの可能性があるためだ。


 しかし、大型で保管が困難なカミツキガメは、警察署内でも厄介者だ。

 しかも飼い主がいる「ペット」ではなく野生化した「元ペット」である場合がほとんどのため、警察署もカミツキガメをどう扱っていいのか苦悩しているという。

 そこで、カミツキガメの行き先(保管場所)に困った警察署から岐阜大学に相談がくる。

 「カメに困ったらカメの専門家にアドバイスをもらおう」ということだ。

 岐阜大学の繁殖学研究室には淡水性カメ類の研究や保全活動を行っている実績がある。



 今回、繁殖学研究室がカミツキガメを引き取った経緯は以上のような経緯をたどっている。

 そして引き取られたカミツキガメは、特定外来生物であることから防除することが決まり、安楽死という対応に至ったのだ。 

    私は今回、はじめてカミツキガメと触れあった。

 そのたくましい姿は本当にカッコいいと思ったし、凛々しくてしたたかな、美しい生き物だ。

 けれど同時に、カミツキガメの危険性も体感した。

 カミツキガメについての正しい知識を持っていなければ、大怪我をしてしまう可能性は大きい。

 カミツキガメは、ニホンイシガメやクサガメのように、軽い気持ちで触れることはできないカメなのだ。


 日本全国の河川や水域にカミツキガメが繁殖・定着して広がれば、子どもたちが自由に水遊びを楽しむ自然環境は無くなると思う。

 今、カミツキガメの繁殖を食い止めなければ「野生のカメとの暮らし」は、姿形がまるっきり変わる。

 そして、今私たちが想像する「野生のカメとの暮らし」はおとぎ話となっていくだろう。


 カミツキガメはほんの一例にすぎないが、外来種問題は深刻であり、喫緊の課題だとあらためて気づかされた。




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亀に踏まれて -KAME HACK-

主に「野生の亀」について探求しています。 現在、西表島で研究中。